日本を代表する下町・浅草には、今日も“ザッツジャパニーズ!”を求めて、世界中から多くの観光客が押し寄せる。その一方でこの町は、東の演芸文化の中心地。ストリップの幕間に立つ下積みコメディアンを、叱咤激励で支えてきた町だ。
小銭を握りしめ、馴染みの酒場に足を運ぶ芸人たちの姿が目に浮かぶ浅草六区。その一角にある『捕鯨舩』もまた、多くの芸人たちに愛されてきた。その証拠に看板には“鯨(げい)を喰って芸を磨け!!”の文字が。
現在はすっかり高級食材になってしまった鯨肉だが、そもそも太古の昔から日本人の貴重なたんぱく源で、特に戦後、鯨の竜田揚げは長く“キングオブ給食”の座に君臨していた。しかし「(給食での)嫌な思い出があんのか、店の入り口まで来て“鯨は喰いたくねえ”って渋る客もいる。そいつらに“騙されたと思って喰ってみな”って出すんだ」。店主の河野さんが、べらんめえ!と突きつけるのが名物、鯨の竜田揚げである。
サクッとした歯触りの薄い衣をまとった鯨肉。秘伝のタレで味付けされたそれは、上等な牛の赤身のよう。口の中でホロリとほどける柔らかさで、想像していた臭みは全くない。「南氷洋のミンククジラは魚よりもオキアミを喰う。だから生臭くない」のだとか。
エキスが効いた焼酎ハイボールと合わせれば、尚のこと箸が進む。鯨の竜田揚げには牛乳よりも焼酎ハイボールだなあ…と、大人の特権に酔いしれているうちに、皿もグラスもあっという間に空っぽになった。 穏やかでスケールが大きく、漁業の神、恵比寿様の生まれ変わりともされる鯨。そして鯨のような深い懐で、若き芸人たちを見守り続けてきた浅草という町。そんな下町の温もりを自宅でも感じたくなったら、やっぱりタカラ「焼酎ハイボール」。下町で愛される爽快な旨さが喉元を過ぎ、ふんわりとした酔いがやってくる頃には、でっかい夢のひとつも語りたくなるかもしれない。
- 鯨一筋40年の名店。ご主人の河野さんは浅草で舞台を踏んでいた元芸人さんだ。鯨の竜田揚げ1360円と元祖チューハイ450円で夢を語るもよし。また、ミンククジラの本皮1800円や尾肉3000円の至福を味わうもよし。つくばエクスプレス浅草駅A1出口から徒歩2分。17〜22時(土・日・祝は16時〜)、木休。台東区浅草2-4-3
03・3844・9114