下町大衆酒場物語 第十五回 ニューカヤバ 茅場町

気っ風のいい女将と、その娘が50年かけ、築いて守った「男たちのオアシス」

開店の少し前、洒落た若者とその彼女と思しき2人が「入れますかー」とのれんをくぐろうとするが、女将は「ごめんねー。まだ早いし、それに女性はちょっと……」と惜しげもなく断ってしまった。女将の娘・服部容子さんが話す。

「お店の雰囲気が壊れちゃうの。うちは(電車の女性専用車とは逆の)“男性専用車”みたいなものだから」

創業はちょうど50年前。酒屋と、その一角でお酒を振る舞う「角打ち」の店を経営していた流れで立ち飲みの店を開業した。気軽に飲んでほしいから、お酒は自販機で買って勝手に飲むスタイル。おつまみも、カウンターへ行き、冷奴や板わさなどを買う。半世紀前に考え出し、根付いたスタイルをそのまま踏襲しているのだ。焼鳥も自分で焼くセルフスタイル。この焼鳥に経営者の思いが隠されていた。

「値上げしたくない、でも鶏肉は大きくしたい。だから母が毎朝、自転車で築地に行き、買ってきた肉を自分で串に刺してるんです」

そんな焼鳥を炭火であぶり、焦げ目がついたらタレに絡めてもう一度焼く。脂とタレが絡まってシュウシュウと音を立てれば、我ながら見事な逸品のできあがりだ。それに合うのはもちろん、「焼酎ハイボール」。重量感のある鶏肉の奥からにじみ出てくる旨みを炭酸で流し込むと、人生、これが至福だったのか! と再確認できる痛快な旨さだ。

ちなみに、この焼鳥は「1人4本くらいまで」。初めてのお客さんが頼みすぎると、常連の分がなくなってしまうからだ。そして、外に赤ちょうちんが出れば、今日もお店はご覧の通りの大繁盛。なるほど、独自のルールは、50年の歳月によって築かれた男たちのオアシスを守っていたのだ。

焼鳥(1本100円)のほか、つくね(1本100円)も炭火で焼いて食べる。サラダ(200円)は、ポテトサラダとマカロニサラダが盛られたもの。ほとんどのつまみがちょっきりの価格で買えるのが特徴だ

「ニューカヤバ」
駐車場の奥に店があるため、開店後に掲げられる赤ちょうちんを目印に
東京都中央区日本橋茅場町2-17-11
非公開
17:00〜21:00
土・日・祝
  • ※ 2014.9.8 掲載分
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