使い込まれて角が丸くなったコの字形のカウンター、壁には肉豆腐150円、カキフライ150円と二度見したくなるお品書き。気取らず人なつこい常連客。そう、ここは1000円で酔える「せんべろ」文化のメッカなのだ。お店の西野善夫さんが話す。
「昔、赤羽は工業地帯で、24時間体制で働く工員さんのために、安くて朝から飲める立ち飲み屋がたくさんあったんですよ」
文化は時間の経過と共に洗練されていく。かぼちゃの煮付けは150円で3切れ。カキフライは150円で大きめが2個と、まったくムダがない。すでに酔っ払った人はお断り。皆がほろ酔いで気持ちよく飲む場だからだ。携帯電話もメールもお断りと貼り紙がある。西野さんは「そりゃ、飲む場所にそんなもの必要ないでしょ?」と笑う。
店の自慢は自家製チャーシューともつ煮込み。
「うちのチャーシューは牛肉を使ってるよ。2〜3時間煮込んで、一日おいて、味が染みてから出す。もつ煮は……食ってもらえばわかるよ」(西野さん)
説明にもムダがないが、彼の言うとおり。さっそくチャーシューから頬張ると、甘い醤油が少しこげた香ばしさが、肉にも脂にも染みて口の中で延々と転がしたくなるほど。もつ煮は、まったく雑味なし。味噌ベースの汁はあっさりしていて、無言で仕事の丁寧さを物語る。やわらかいもつと、味が染みた豆腐をかき込み「焼酎ハイボール」をグイッといくと、辛口の味わいに、思わず「くぅ〜っ!」と声が出る。
なぜって、世にいわゆる贅沢な店はたくさんあるが、時間と丁寧な仕事が創り出した文化を味わう----これほどの贅沢がどこにあろうか! と思うからだ。
写真手前から、自家製チャーシュー(150円)と、もつ煮込み(110円)。肉屋さんと長い付き合いがあるからこそ、このお値段
- 昼から営業。なのに店内はいつもほぼ満員。
- 東京都北区赤羽1-3-8
- 03-3901- 5246
- 火〜土11:00〜22:00、
日11:00〜21:30 - 月曜
- ※ 2016.7.4掲載分
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