下町大衆酒場物語 第十八回 炭火焼鳥 金たろう 亀有本店

紀州の備長炭で焼く焼き鳥が引き寄せた「客」と「運」!?

大将が炭を叩いて見せると、キンキン! と高い音がする。紀州備長炭の証だ。炭として値ははるが、肉を焼くと、外側は熱でパリッと、内側は赤外線でアッツアツ&ジューシーになる。しかも、シュウシュウ焼かれる肉のデカいこと!
「店が流行ってなかった頃、肉を余らせるのがもったいなくて大きなものを出したら、これが普通だと思われちゃったんだよね(笑)」

大将・鈴木孝一郎さんは苦労人だ。27年前、まだ賑わってなかった亀有北口中通りに店を出した理由は、「居抜きで、家賃も安かった」から。買った備品はカウンターと、今はボロボロになった縄暖簾。冷蔵庫は家から持ち込んだ。そんな状況なのに大将は商売っ気よりサービス精神を磨いた。肉は毎日仕入れ、自分が切って串に刺す。重労働だが、切りたてだと肉汁が出ずうまい。そんな大将を神様は放っておかなかった。
「たまたま買ったロト6が当たったんです。それとは関係ないけど、お隣さんが店を閉めた時、(店が人気になっていたため)客席を広げることもできました」

と、話の途中で焼き鳥の盛り合わせが焼けた。デカいレバーを頬張ると、表面はパリッと、でも内側はふっくらとし、この味と食感が繊細な気遣いの賜物とわかった。合わせるのは、辛口の「焼酎ハイボール」だ。塩と肉の脂がしょっぱく混じったあと口を、炭酸の刺激と焼酎のほのかな旨みで流し込むと、旨い! 人の思いがこもった食べ物とはこれほどに旨かったかと響いてくる。

商売の神様はやはり見ているようで、昔は場末だった場所は、いまや大将の店の影響もあってか賑わう商店街の一等地。なるほど、人が寄るところには、運が寄りつく、のかもしれない。

バラエティ豊かな焼き鳥の盛り合わせ(530円)は右からモチベー、レバー、ささみ串(明太子)、梅じそ、豚バラ(単品は110円〜210円)

「炭火焼鳥 金たろう 亀有本店」
夏はあっさりした「鳥のぬた」(470円)がよく出るとか
東京都葛飾区亀有5-23-10
03-3606-8800
03-3606-7676
17:30〜翌1:00(L.O.0:30)
年始
  • ※ 2015.08.05 掲載分
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