いわゆる「老舗」ではない。創業者は07年に弱冠29歳で店を立ち上げている。だが彼らは「今から伝統を始める!」と意気軒昂で、そうできる理由もあった。「モツって仕入れが命じゃないですか。そこで創業前、(食肉市場がある)芝浦から直接、仕入れるルートを開拓したんですよ。何とか情熱を認めてもらった形です。だから鮮度は最高、しかも価格も安いんです!」
若者はこの優位性を顧客に還元すると決めた。この豚モツが、1串なんと90円。理由を聞くと企業秘密かのように小声で「商売長く続けるなら、客単価向上より、満足度を高めるほうが大事でしょ?」と言う姿が微笑ましい。さらに彼らは調理法にもこだわった。
「仕入れたモツは時間と共に劣化します。だから1秒でも早く! と考えて下処理します。また、しろ(直腸〜大腸)や、きく(小腸付近の脂)は硬くなるから柔らかく炊くんですが、この時、ウチは香味野菜で香りをつけているんですよ」
彼らはこの情熱の一品を炭火で焼いて出す。まずはしろ。外側をカリッと噛みやぶると、脂の旨みに、ほんのりと香味野菜の風味が混じって鼻の奥に抜けていく。若い店員が「サシが入ってますよ」と自慢するタン厚切りは、写真の通りド派手なまでに厚切りで、食感はコリッコリ。これら風味の強いモツをゴクッと焼酎ハイボールで流しこむ幸福感ったらない!
「昔、串は1本100円だったんですが、消費税が上がった時に『ならウチは』と90円に下げたんです。だって、バカみたいに手間かけて、バカ正直に満足してもらって……ボクらができるのは、それだけだから」
まるで恋歌の歌詞のような台詞だ。若者よ、下町の伝統を創ってくれ――。
手前から、厚切り上タン炙り焼き(1人前380円、2人前〜)、 1串90円の串焼き各種
- 店名は「お父さんの場」と「とん(豚)」をかけたもの。上野と下総中山にも店舗あり
- 東京都足立区千住3-48
- 03-3870-0108
- 17:00〜23:00(日曜16:00〜22:00)
- 無
- ※ 2017.8.10掲載分
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