路地裏のビルの2階にある「とことん勝家」を切り盛りする千葉さんは、とんでもない凝り性だ。スーパーの店長だったが、「上州もて豚」の生産者と縁ができると味に惚れ込んで共同で独立。臭みが少なく旨みが深い肉をいかに美味しく出すか研究し尽くした。
まずは“新鮮さ”にこだわった。彼が「いい色でしょ」と見せる脂身はピンクがかった白で、黄ばみがないのが鮮度の証。次は“揚げ方”。衣と肉をつなぐバッター液の配合から油の温度まで「何度も揚げて食べてを繰り返しましたよ」と顔をクシャッとさせる。
そんな彼の店だから注文のスタイルも独特で、5〜40mmの好きな厚さでかつを頼める。名物は、ドドーンと分厚い40mm。厚いから内側に肉汁や香りが閉じ込められ、肉の旨み満点のかつになるのだ。ただし、肉が硬くならないようにジワジワと内側まで火を通すのは至難の業。調べた限り数店舗しかない、というわけだ。
さっそく衣にザクッと噛みつく。おお!めちゃ分厚いのに簡単に歯で噛み切れるほど軟らかい!しかも口の中で肉の繊維がファサッとほぐれると、旨みとあっさりした甘みがいっぱいに広がる。こいつぁうまい!と頂くのはもちろん焼酎ハイボールだ。何がすごいって、肉の旨みが焼酎ハイボールの炭酸の刺激とキレのある辛口の味わいで幸福感へ昇華していくさま。これは味わう芸術品だ!
「11年にお店を出す時“こんなとこにお客さん来るのかなぁ”と心配もしたものです。でも今は気に入ってるんですよ。とんかつ屋なんだから、立地や看板の大きさでなく、口コミで広がるとんかつの味一本で勝負すればいいじゃん、と」
名付けて“路地裏の求道者”かもしれない。
ロース(40mm)は300g超で1800円。これも絶品の豚しゃぶは1380円(写真は2人前)
- ポテトフライ、あさりバターなど、居酒屋メニューも充実
- 東京都中央区日本橋茅場町1-5-12
大興ビル2F - 03-3664-9595
- 11:00〜14:00(L.O.13:30)
17:00〜22:00(L.O.21:30) - 土・日・祝
- ※ 2017.11.6掲載分
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