下町大衆酒場物語 第二回 もつ焼 のんき 堀切菖蒲園

常連客たちに守られ、受け継がれる"下町の文化遺産"ここにあり

いつから続く酒場か正確に知る人がいない。
三代目店主・山崎敦氏が話す。

「戦後、初代店主がモツの仕込み方に工夫を凝らし、人気になった店です。ただ、私も初代をひと目しか見たことがないから詳しいことはわからないんですよ」

それもそのはず、この店は代々、常連客が継いでいるのだ。初代が高齢を理由に店を閉めようとした時、常連客が「困る」と言い出し、お客さんの一人だった小料理屋の女将が経営を継いだ。三代目・山崎氏も元は常連客のサラリーマンだったと言う。

なぜ、この店がなくなったら困るのか。理由は "しろ"の串焼きがあまりに絶品だから。モツのしろは腸を指す。しかし同店のしろは旨味が凝縮された直腸。味が濃いだけに、仕込みが雑だと臭みも残るが……。

「長時間煮込みながら洗うんです。コツは門外不出なので詳しくは話せませんが
"脂と旨味を残す洗い方"でしょうかね」

オススメの味付けは濃いめのタレ。熱々を頬張ると、パリッとした表面の奥から、香ばしさに負けない旨味がトロッとにじみ出す。この逸品のお相手は、店主自慢の "焼酎ハイボール"。レモンの香りと強めの炭酸が特徴のすっきりと飲みごたえのある味わいだ。

「しろを引き立てるでしょ。これも初代から受け継いだ配合のままです」

なるほど、このハーモニーはまさしく "下町の文化遺産"。常連客がなくすべきでないと言い、かつ、現在も "食感に気持ちを込めてます"と話す店主が継いでいるのもうなずける。そんな会話をしているうち、カウンターはあれよという間にお客さんで埋まり、その様子を店の歴史に一番通じているであろう古い招き猫が見下ろしていた。

串焼きは一皿4本入りで、360円。土佐の備長炭を使用して焼きあげる。山崎氏いわく「いい炭を使うと、味の入り方が違う」とか。名物の「しろ」をはじめ、「たん」「はつ」「レバー」など10種類から選べる。上は、男爵いもを使った「ポテトサラダ」360円。

「もつ焼 のんき」
焼酎ハイボールは290円。串焼きの他、ニンニクシソ漬けや、塩らっきょうなど、三代目が開発したメニューも人気。
東京都葛飾区堀切5-20-15
03-3601-4052
月〜土 17:00〜22:00
日 ・ 祝 17:00〜21:00
水曜日
  • ※ 2012.08.20 掲載分
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